探し物のムダをゼロに!現場が変わる『5S』のすすめ」:整頓してみよう

前回は「探し物のムダをゼロに!現場が変わる『5S』のすすめ」:まずは整理から」という記事で、5Sというフレームワークの概要と、その第一ステップである「整理」の方針や具体的な進め方についてご紹介しました。

今回は、その次のステップであり、「探すムダをなくす」うえで非常に重要な「整頓」についてお話しします。

整頓とは

整頓とは、「必要なものを使いやすいように配置し、誰が見ても所在がすぐに分かるようにすること」です。これは単に物を並べることではなく、「最も使いやすい位置に配置し、視覚的に把握できるようにする」ことを目的としています。

整頓がされていない職場では、物を探す時間や、無駄な歩行・運搬が発生し、生産性が低下してしまいます。

そこでまず「整理」を行い、不要な物を取り除くことでスペースを確保します。スペースに余裕が生まれることで、物を整然と配置できるようになり、整頓がしやすくなります。

さらに、スペースに余裕があれば、レイアウトの見直しや改善も可能となり、より効率的な職場環境づくりにつながります。

整頓のカギ

整頓のカギは、「誰が見ても分かる」仕組みを作ることです。例えば、工具置き場に型枠や写真を使って表示する、通路や保管棚には区画線を引いて視覚的に管理するなど、工夫次第で整頓レベルは大きく向上します。

以下に、分かりやすい例を示します。下図は10×5のマスに1~50の数字をランダムに並べたものです。棚をイメージしてください。仮に「8番の棚に入っている書類を取ってきて」とお願いされたとき、すぐに取り出せるでしょうか?

この配置を、以下のように規則的に並べ替えたらどうでしょうか?「8番」がどこにあるかは一目瞭然ですよね。このように、誰が見ても分かるようにしておくこと(=整頓)で、探す時間は劇的に短縮されます。

また、「7の倍数」に特別な意味がある場合には、下図のように色付けすることで、直ぐに7の倍数がどこにあるかを視覚的に把握することが可能になります。

整頓の本質は、「誰が見てもすぐに分かる」「誰が使っても同じように扱える」環境を整えることにあります。ただモノを並べるだけではなく、視認性や使いやすさを考慮した配置にすることで、探す時間を削減し、ミスや混乱を防ぐことができます。

今回紹介したような「番号順に並べる」「特定の条件で色分けする」といった工夫は、ほんの一例です。こうした仕組みを作ることで、個人の経験や勘に頼らない、誰でも同じ成果を出せる職場づくりが実現します。

整頓は、一度やって終わりではなく、常に使いやすさを意識して見直し・改善を続けることが大切です。日々の業務に整頓の視点を取り入れ、より快適で効率的な職場環境を目指していきましょう。

整頓の具体例

以下は工場における整頓の具体例になります。これはほんの一部ですが、前の章の「整頓のカギ」の考え方をベースにこのように活用していくことが出来ます。

置き場を決め、どこに置いたらよいかを明確にする(戻させる仕組みづくり)

以下は、棚に工具を配置している事例です。棚の番号と工具にそれぞれ番号を付け、工具の番号と一致する棚に収納しています。こうすることで、「工具を戻すべき定位置」が明確になり、使用した人がどこに戻したらよいかが分かるので、整然とした状態が保たれます。

また、誰がその工具を使用中かが分かるよう、ネームプレートを置いておくのも有効です。これにより、緊急時に「誰に連絡すればよいか」が一目で分かり、情報共有やトラブル対応がスムーズになります。

立てて配置することで、全体を「見える化」する

以下は、ドリルの整頓事例です。横に並べてボックスに収納する方法もありますが、このように置き場所を決めて立体的に配置することで、各ドリルの種類やサイズ(直径)を一目で把握できます。

視認性が大きく向上するため、「どこに何があるか」を探す時間のムダを大幅に削減できます。また、サイズ順や分類ごとに並べることで、整然とした美しい職場づくりにもつながります。

まとめ:整頓は「仕組み」であり「文化」

「整頓」は、単にモノを片づけることではなく、誰が見てもすぐに使える状態を「仕組み」で実現する活動です。そして、その仕組みを定着させることは、組織の「文化づくり」にもつながります。

「探すムダを減らす」だけでなく、事故やトラブルの未然防止、作業の効率化、さらには新人の早期戦力化にも大きく貢献します。整頓された職場は、美しく、働く人の意識やチームワークも自然と高まっていくのです。

5Sの2ステップ目である「整頓」がしっかりと根づけば、次に進む「清掃」「清潔」「しつけ」もスムーズに取り組めるようになります。

一度きりの改善ではなく、日々の習慣として定着させることが、強くてムダのない現場をつくる第一歩です。

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