前編では、中小企業における生産性向上の鍵として注目されている「RPA(Robotic Process Automation)」について、次のようなポイントを解説しました。
- RPAとは何か
人がPC上で行っている定型業務をソフトウェアのロボットが代行する技術であり、特に「繰り返し作業」「ルール化できる作業」に強みを発揮します。 - なぜ中小企業で注目されているのか
人手不足やコスト制約の中で、業務の効率化と属人性の排除が求められており、RPAはその有力な手段として期待されています。 - 導入の考え方
いきなり大規模な自動化を目指すのではなく、「小さく始めて効果を実感しながら広げていく」ことがポイントです。
今回はその後編として、実際のツール(Power Automate)を使った自動化の具体例と、どのような準備が必要かについて解説していきます。
Power Automateとは
Power Automateは、Microsoftが提供する業務自動化ツールで、Microsoft 365(旧Office 365)の一部プランには標準搭載されています。
前編でも触れたとおり、プログラミングの知識がなくても、「フロー(処理手順)」を組み立てるだけで、自動化が可能な仕組みです。
主な特徴は以下のとおりです。
- ノーコード/ローコードで操作可能
ドラッグ&ドロップで直感的に操作でき、専門知識がなくても利用できます。 - Microsoft製品との親和性が高い
Outlook、Excel、SharePoint、Teamsなど、日常業務で使うツールとスムーズに連携可能です。 - クラウドとPCの両方の作業を自動化
クラウド上の処理を自動化する「クラウドフロー」、PC上の操作を自動化する「デスクトップフロー(Power Automate for Desktop)」の両方を活用できます。 - 柔軟なトリガー設定
「ファイルがアップロードされたとき」「毎朝9時に」など、条件に応じて処理を自動実行できます。
今回は、筆者のWindows環境に標準搭載されていたPower Automateを使って、簡単な自動化を試してみました。
自動化シナリオ:注文メールからの発注書保存
今回の自動化対象は、以下のような業務を想定しています。
顧客からの注文メール(添付に発注書)が届いたら、自動的に添付ファイルを保存する処理
条件:メールのタイトルに「注文」が含まれている
処理:添付ファイルを、当日の日付を付加したファイル名で、指定フォルダに保存
図式化すると以下のようになります。
作成したフローの構成
上記のフローをPower Automateで実装してみると以下のようになりました。
図:Power Automateの画面
フロー概要(全9ステップ)
以下が今回設定を行った9つのステップになります。
- Outlookの起動
- メールメッセージの取得
- Outlookの終了
- 本日の日付を取得
- 日付データを文字列に変換
- ファイル名の末尾に日付を付加
- 添付ファイルの保存
- ファイル名を変更(例:発注書_20250428.pdf)
- 完了メッセージを表示
「図:Power Automateの画面」の左側に用意された「アクション」を順番に配置していくだけで、簡単にフローを構築できます。いくつか処理を解説すると、
1.Outlookの起動
→「Outlookを起動する」アクションをダブルクリックし、保存するだけ。

2.メールの取得
→「Outlookからメッセージを取得」をダブルクリックし、
「件名に『注文』を含む」などの条件を指定。保存先フォルダも設定可能です。

8.ファイル名の変更
一度「発注書.pdf」を保存し、その後で「発注書_20250428.pdf」のように、日付付きファイル名に変更する方式を採用しています。
処理を組み合わせていくだけで、複雑な処理も簡単に実装できます。
また、フローを毎朝9時に実行したい場合は、スケジューラを設定するだけです。
できること(アクションの例)
今回は簡単な事例でしたが、Power Automateが備える「アクション」は非常に多岐にわたります。
- ファイル操作(保存、名前変更、削除)
- データの取得と変換(文字列処理、日付操作など)
- 外部アプリケーションとの連携(Teams通知、SharePoint連携など)
- 条件分岐やループ処理(If、For each)
- Webサービス連携(TwitterやSlack、Googleサービスとも連携可能)
- 音声認識やAI連携(音声ファイルからテキストを自動生成、AIによる言語翻訳も可能)など
「図:Power Automateの画面」の左側に表示されるアクション一覧を見ると、どれだけ多くのことが可能か、イメージできるはずです。
まとめ
RPAというと、「大企業のための高価な仕組み」と思われがちですが、今ではMicrosoft Power Automateのようなツールを使えば、中小企業でも手軽に導入し、日常業務の中で本当に役立つ自動化が実現できます。
メールの振り分けやファイル保存といったシンプルな作業から始めるだけでも、「人がやる必要のない仕事から解放される」感覚を実感できるはずです。そして、一つの成功体験が、次の自動化アイデアを生み、業務全体の見直しや改革へとつながっていきます。
特に中小企業にとっては、「限られた人手・時間・コストで成果を最大化する」ことが重要です。その意味で、RPAは単なる作業効率化のツールではなく、経営資源を最適化し、競争力を高めるための戦略的な武器とも言えるのです。
最初は「こんなことで自動化?」と思えるような作業からで構いません。まずは身近な1業務から、Power Automateを使って“業務の見える化”と“自動化の可能性”を体感してみてください。
未来の働き方は、「人にしかできない創造的な仕事」に集中すること。
その第一歩として、あなたの会社の「働き方改革」は、RPAから始まるかもしれません。
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